2010年欧州ソブリン危機は本当に落ち着いた?

2010年欧州ソブリン危機は本当に落ち着いた?

欧州ソブリン危機の基礎知識

2010年には「欧州ソブリン危機」と呼ばれるものが起こりました。問題となったのは「ソブリン債」で、一般的にソブリン債とは諸外国政府や政府関係機関が発行している国債のことです。政府の保証があるため、比較的リスクの少ない投資対象として知られています。
日本の国債もソブリン債の一つになりますが、日本では国債を除く、あくまでも外国から発行されているものを指します。特に安全資産として信用格付けが高い先進国の国債のことを指しますが、欧州のソブリン債が暴落してしまったことで、安全な資産として購入していた投資家たちにも大打撃を与えました。

欧州ソブリン危機がもたらしたもの

そもそも、欧州ソブリン債が暴落した欧州ソブリン危機は、「ギリシャ危機」に端を発します。「ギリシャ危機」は、ギリシャが政権交代をしたとき、国家財政について粉飾決算があったことから起こりました。
ギリシャでは、これを受けて財政緊縮策を行っていたのですが、国民の不満が高まってIMFからの支援金の返済を延滞することになりました。同時にEUからの支援金が終了してしまったため、連日EUの首相らが集まって支援の継続を検討していたわけです。ギリシャでは緊縮策は受け入れず、ユーロ圏には残るという条件を提示していたので、連日ギリシャのチプラス首相がニュースで取り上げられていました。今はEUからの支援金を受け入れる代わりに、緊縮策を進めて財政改善に取り組んでいます。
しかも、欧州ソブリン危機が示したのは、ギリシャの財政難だけではありません。実は、ギリシャ以外にもEUを構成する国々には債務超過な国々があります。いつデフォルトが起こって、財政破綻するかわかりません。
それゆえ、EU自体に対して信用力が下がり、ユーロ自体の信頼が下がっており、安くなりつつあります。ユーロはEUの共通通貨ですが、ドルや円に対抗する通貨としてマーケットで通用してきました。
しかし、ドイツやフランス以外に数多くの後進国がEUに加盟するようになり、ユーロの価値が下がり気味なのは事実です。

ソブリン危機が今後に与える影響とは

ソブリン危機は、EUの弱点を露呈することになりました。ドイツやフランスといった先進諸国が主導するEUですが、難民問題などで経済が停滞しています。共通通貨は信用力が高く金利が低い「ドイツ・マルク」を継承するものでしたが、EUが金利引き上げを続けた結果、それについていけなくなったギリシャや他のヨーロッパ諸国が財政難にあえぐようになっています。結果としてユーロの信用力が下がり、ヨーロッパの先進国の信用も下がっているわけです。
ギリシャは当面EUからの支援金があるので問題は表面化していませんが、同様のことが起こらないとも限りません。ギリシャにかぎらず、東ヨーロッパ諸国はGNPもドイツの十分の一のところも多く、第二のギリシャが出てきてもおかしくない事態にあります。また欧州ソブリン危機のようなことが起これば、今回と同じように世界的に大きな影響を与えることにもなります。

おわりに

2010年に起こった欧州ソブリン債については、ギリシャの財政危機が落ち着いたため危機的状況は一歩後退したといえます。ギリシャは、EUから提示された財政改善案を受け入れ、財政再建の途中です。増税も実施し、歳入が増える努力をしているところで、デフォルトの危機を回避しています。
しかし、一方で世界的に見てユーロのデメリットも見えてきました。ユーロ全体の経済が伸び悩む中、第二のギリシャが出てくる可能性も否定できません。イギリスのEU離脱問題もあり、EUの存続も危うくなってきました。先行き不安の中、欧州ソブリン債の影響は世界的不安につながっているといえます。

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