VWの排ガス不正事件と経済

ドイツの名門企業VW
ドイツは世界有数の経済大国で、GDPは世界第四位。勤勉でオンとオフがはっきりしており、高い生産性を誇る国として知られています。そんなドイツには、世界中で知られる大企業が多いのですが、古くから工業が盛んで主な輸出産業の一つが自動車です。日本でもブランド車が知られていますが、その中でもVW(=Volks Wagen フォルクスワーゲン)は、知名度が高いです。
しかし、そんなVWで排ガス不正事件が起こってしまいました。名門企業の不祥事とあって、ドイツ経済や世界にも影響が広がってしまいました。一企業の不正と経済の関係性は随分深かったようです。
不正事件の内容とその結果
そもそもVWの排ガス不正事件は、「窒素酸化物」という成分の規制値を巡るものでした。この成分は、人体に影響すると言われており、呼吸器や肺によくないと言われている成分です。
VWでは、違法なソフトウエアを使って、この基準をクリアしたものとして自動車を出荷していたのです。米国の環境保護局の指摘で今回の不正が明るみに出て、VWは対規模なリコールを行うことになりました。ソフトウエアはすでに除去されていますが、VWは、アウディやポルシェといった高級車については、ソフトウエアを使っていないと報告しています。
しかし、一度失われた信用は回復しておらず、高級車への購入も停滞したままです。アウディやポルシェといった高級車は世界的に販売されているVWの主力であり、利益幅も大きい車種なのでVWの営業利益にも直結しています。それゆえ、VWの株価は一時期40%以上も暴落しました。
リコールの後に、試算でおよそ180億ドルの罰金が課されることが決まっています。日本円に換算すれば2兆円以上ということで、かなり莫大になります。罰金だけでなく、賠償金などを合わせれば1000億ドル以上と試算されています。というのも、VWはこの排ガス不正事件の後に、二酸化炭素の値についても不正があったことを公表しています。これで賠償金の額も上がると予想されており、企業ダメージだけでは済まないレベルになってきています。
ドイツや世界経済との関係性
VWが被る予定の約1000億ドルという金額は、日本円に換算すると14兆円となります。この金額はドイツのGDPのなんと3%にも相当し、ドイツ経済も停滞しているわけです。このVWの不正は、米国からの指摘で知られたわけですが、逆をいえばVWからの告発はなく、自動車業界全体の不信につながっています。VWで研究開発に関わる人間は60万人以上と言われていますが、誰もその問題を認知していなかったもしくは黙秘しているということになります。このことから、「VWで不正が行われていたわけだから、他の企業でも不正が行われているのではないか?」と消費者たちが不安に思っているわけです。
不正事件からかなり時間が経っていますが、未だ誰の指示で行われていたことなのか、首謀者は誰なのかも特定されていません。ドイツの旧式な職業観によって、不正内容や原因があやふやなままになっているのも不安要因の一つです。
VW自体は、アメリカでの売上が落ちてしまいましたが、幸いにして中国での販売が伸長しているため、企業として存続しています。
しかし、今後負債が増えるようならリストラなども懸念され、いずれにせよドイツ経済にとってはダメージが大きいといえます。
おわりに
VWのディーゼル車から、環境基準を超える窒素酸化物が輩出されているということで、環境訴訟などが起こっていて、この問題は世界経済に大きな影響を与えています。
日本の自動車会社も不正を働いているのでは?と疑がわれ、各社対応に追われました。VWの不正は、EU側も気づいていたのでは?という疑惑もあり、黒い噂がつきまといます。
一企業のこととはいえ、自動車業界全体の不信につながっており、今後もその影響は続くものと考えられます。