世間を騒がせた「ギリシャ危機」の今

そもそもギリシャ危機とは?
あれだけ世間で騒がれたギリシャ危機。連日ニュースでギリシャの首相が登場したのもあの時ぐらいではないでしょうか。ギリシャとEUとが金融を巡る争いをしていたことは、多くの人が認識したと思います。
しかし、実際のところギリシャ危機がどういうものかを正しく把握している人は多くないのではないでしょうか。
そもそも、「ギリシャ危機」とは「ギリシャ共和国の財政危機」のことです。2009年にギリシャ共和国の政権が交代したのですが、そのときに国家の財政赤字が公表した数字と異なっていたために問題となりました。GDPに対して5%ほどだと言われていたのですが、実際は13.6%ともなっていて、一気にギリシャが財政破綻するのでは?と憶測を呼びました。
そこでギリシャの国債が暴落し、関係の深い通貨のユーロも暴落してしまいました。EUやIMFは、ギリシャのために何度となく緊急支援をしてきました。2012年に第二次支援を決定したのですが、総額1300億ユーロという金額がEUの先進国の経済的負担になりました。
ギリシャ危機がもたらした影響
EUからの支援を受けていたギリシャですが、EUはただお金をギリシャに与えていたわけではありません。財政緊縮のための計画を実行する条件がついており、ギリシャ政府は政策を進めていました。支援金も返還義務があるものだったんですね。そのかいあって、財政面は改善しつつあったのですが、公務員の給与カットや増税、公共投資の削減によって景気が落ち込んでしまいました。国民の不満もたまり、ついに政権交代が起こってしまいます。そこで誕生したのがニュースでおなじみになったチプラス大統領を筆頭とする新政権です。
チプラス政権となって、IMFへの資金返還を延滞し、EUからの支援も終了してしまいます。緊縮策をEUは求めますが、これをギリシャは拒否。しかも、国民としてはEUに残ることを選択したため、交渉が難航するという事態に発展したわけです。今はEUによって第三次の金融支援が行われたため、当面の問題は解決しました。
ギリシャ危機のその後
現在、ギリシャでは年金制度の改革などが進んでいます。改革によって若者世代に年金が受け取れるようにしたり、自立した運用を行うよう法制度を整備したりしている最中です。
また、国内産業を盛んにするために、宿泊業等の自由化を進めました。これで競争力が高まり、若者の雇用を創出したりしています。
ギリシャはパルテノン神殿といった世界遺産も豊富にあり、観光業は一大産業です。
それから、地中海性気候を利用した農業も期待できます。良質なオリーブやぶどうがとれるため、オリーブオイルやワインといった加工品輸出も注目されている分野です。そして、実は石炭がとれるエネルギー大国。ただ、石炭は二酸化炭素を大量に排出するため再生可能エネルギーが模索されています。ギリシャでは、主に風力発電と太陽光発電が進んでいますが、実は日本の企業によって、二酸化炭素を再回収する新型の火力発電所も建設が進んでいます。現在は90%以上を火力発電に頼っていますが、今後エネルギー消費量も削減できる見通しです。
おわりに
ギリシャは、地中海性気候でとても過ごしやすい国です。国民性も穏やかですが、その分余裕がなくなると人々の怠惰さが見え隠れするところがあります。財政としては改善に向かっていますが、再び同じような問題が起きることがないとは言えません。イギリスのようにEU離脱といった問題は起こっていませんが、再び財政難に陥るようなことがあれば、今度はEUから離脱宣告が起こるかもしれません。EUからの第三次の支援金を返済できるかどうかがカギを握っているといえます。